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教員からホテルマンへ―—ふるさと福島で人生の新たなフェーズに挑む男が描くホテルとは――
全国にビジネスホテルや観光型ホテル等全388施設を直営展開するルートインホテルズ。新たに福島県内第9号店となる「ホテルルートインGrand福島駅前東口」が2025年2月16日に誕生した。
今回の新規開業に際して、スタッフとして大きな責任を担うのが、このホテルを預かる責任者・マネージャ―の松本博紀(56)だ。
大学を卒業後、北海道の大学院で教育学を学び、そのまま25年間にわたって北海道で高校教員をしていた松本が、故郷の福島で新しいキャリアにチャレンジすることになった背景や、ホテルマンとしての想いを訊いた。
ホテル業界に携わるきっかけと松本を動かしたもの
――ホテル業界に携わるようになったきっかけは何だったのでしょうか?
松本 はい。私の出身は福島県でございますが、大学の卒業後は北海道で25年間、高校の教員をしておりました。そして、両親も高齢となり、実家の後を継ぐということになったため転職サイトに登録しました。いわゆる、求職者として自分のプロフィールを登録すると企業からスカウトがくるというものですね。
すると、一番最初にルートイングループからオファーを頂いたのです。その時、面接をしていただいたのが当時の北海道・東北エリアの古内総支配人でした。
面接で、ルートイングループがホテルだけではない、様々な社会貢献事業やスポーツにも関わっていることを、本当に楽しそうに、そして熱く語る姿を見てとても興味が沸き、ご縁を感じて入社を決意しました。
――ということは、ご自身もまさかホテル業界に携わるようになるとは想定していなかったんですね。
ところで、「故郷に錦を飾る」という言葉もありますが、ラグジュアリー感のあるハイグレードな大型ホテルの責任者になることに、周囲の反響はいかがでしたか?
松本 教員からホテルマンへの転身に、当然周囲は驚いていました。実家の家族は福島に戻ることをとても喜んでくれましたが、一方で、家族の犠牲になって教員を諦めたのではないかと心配もしてもいました。実際のところ、ある程度の年齢になると、教員としての転職は難しい面も感じていたので、転職サイトに登録したのです。地元の知人や友人も、私が地元に戻っても教員を続けると思っていたようですね。
でも、私自身は、50歳という年齢でホテル業界という新しい仕事に携われたことを、人生の新たなやりがいだと捉えています。
現在、担当するホテルは3店舗目となりますが、2店舗目のホテルルートイン二本松でマネージャーを務め、そして今回、ホテルルートインGrand福島駅前東口という294室に及ぶ大きな規模のホテル運営を任せていただき、さらに周囲からは驚きの声が上がっています(笑)
今回は約100名のスタッフと共に、残り約10年となるかもしれない私のホテルマン人生ですが、共に成長していきたいと考えています。
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――ところで、25年間の高校教員からホテルマンへの転職で、教員時代で得た経験が生かされていることや、またはギャップを感じることなどありましたか?
松本 まず、私はホテル業においてお客様の声、スタッフの声をしっかりと聞くことが大切だと考えています。『傾聴』という言葉がありますが、その姿勢がまず大切だと実感しています。
教員になりたての頃は様々な困難がありましたが、経験を重ねながら、まずは相手の話に誠意を持って耳を傾けることの重要性を学びました。これは教員生活でもホテル業でも同じなんです。その意味においては、生徒もお客様なのかもしれません。
昔の先生は、生徒への接し方が荒かったというか・・・言うことを聞かなければ力で押さえつければよい、というような考えも一部でありました。
しかし、一般企業ではお客様を大切にし、しっかりと話を聞くことが求められます。私も教員になりたての頃は、どうしても威圧的な態度になりがちでしたね。
でも、今は一般企業のように相手を大切にする姿勢が求められています。もちろん、生徒をお客様と表現することは適切ではないかもしれませんが、生徒一人一人を大切にするという考え方が次第に広まってきたということなんです。
――「人を大事にする」という当社の考え方、スローガンの「いつでも どこでも 人とともに」にも通じる部分がありますね
松本 はい、本当にそうなんです。私は特に当社が掲げる接客の心得の『日本の心』やルートイングループの企業方針が大好きなんです。私が面接をする際にも、当社が従業員を大切にする姿勢や、企業方針と『日本のこころ』を紹介させていただいています。人と人との関わりの中で、相手を大切に思う気持ちが何よりも重要だと考えています。
私が入社を決めた面接でも、その思いと熱意が伝わってきたんです。ルートイングループは従業員を大切にする姿勢を持っていて、企業方針も丁寧に説明していただきました。そして、ホテル業務だけでなく、社会福祉事業や駅伝やバレーボールチームもあって、単にお金を稼ぐだけでなく、社会に還元していきたいという深い思いがよくわかりました。
そして、当時面接をしていただいた古内総支配人からも、会社に対する誇りも強く伝わってきました。だから、この流れに乗っていくべきだという直感と縁を感じたんです。
ルートイングループ『日本のこころ』
わたしたちが目指すものは 日本のこころです
忘れてないですか ねぎらう気持ち
失っていないですか 感謝のこころ
無くさないでください 思いやり
持っているはずです やさしさも
贈ってください 真心を
求めてください やすらぎを
ここにはあります 変わることのない
日本のこころ
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スタッフの笑顔のために~100の人生との出会い~
――これから100名におよぶスタッフを統率しながら、当然、責任者としての指導、または育成など、その関わり方が重要になりますが。
松本 どの世界でも同じだと思いますが、10人いれば10通りの個性があります。それぞれに合わせた声かけや距離感が必要になります。まずは、日ごろからスタッフの表情や様子を見逃さず、その日の調子や様子を察知するアンテナを張ることが大切だと考えています。
それから、同じ言葉でも、心がこもっているかどうかで伝わり方が全く違います。例えば『お疲れ様です』という言葉一つとっても、本当に相手を思って言うのと、形式的に言うのとでは全く違いますから。対象が変わっても、基本的な指導の考え方に大きな違いはないと思っています。
――100名近くのスタッフと接していくことに期待や不安はなどありますか?
松本 これまで採用したスタッフの中には65歳を超える方も面接をして採用していますが、その方の経歴や経験を伺って、頑張ってきたんだなと感じたり、会話や笑顔が素敵だなとか、一人一人と向き合うことを大事にして採用を決めてきました。
ただ、100名になるので、顔と名前を一致させながら声掛けをしていくという大変さはありますが、100人の人生との出会いであると思うと、むしろ楽しみなんです。
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今回、開業する「ホテルルートインGrand福島駅前東口」は客室数が294ルームございます。東北エリアでは2番目に客室数の多いホテルでもあり、東北では初めての「ホテルルートインGrand」ブランドになります。
もちろん、Grandの名に恥じぬような店舗運営をしていくために、スタッフ100名とともに盛り上げていかなくてはなりません。そして、スタッフの100の笑顔と100の幸せを守っていかなければならないという責任もあります。
でも、それ以上に100人とともに新しい店舗を作っていけるという、ワクワクする期待感が大きいんですよ。従業員が日々笑顔で精一杯働いていただける環境を作ることも私の使命だと思っています。
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お客様からの「ありがとう」が原動力
――ところで、ホテルマンとしての7年間を振り返って、特に印象に残っている成功談や失敗談を教えていただけますか?
松本 そうですね、入社したての頃の苦い経験です。チェックインの対応がスムーズにいかず、もたついてしまったのですが、お客様にひどく怒られてしまいました。まずできることは誠心誠意お詫びをすることでしたが、何度もお客様と接するうちに『松本さんいる?』とお声をかけていただけるようになったんです。
同じようなことが、私が責任者になってから発生しました。まだ不慣れな新人スタッフがチェックインの対応をしたのですが、かつての私のようにもたついてしまったことがありました。お客様から『責任者を呼べ』と強く叱責されました。そのスタッフが怒られると同時に、私もその方に
「お前は何をしてるんだ、お前がチェックインをしろ」と言われてしまったのです。
私としては、そのスタッフに経験を積ませたいという思いだったのですが、それはお客様にとっては関係のないことなんですよね。
「責任者を呼んで来い!」と言われましたが、目の前にいる私が責任者なんですよ(笑)スタッフとともにお客様にお叱りを頂きました。
そして、同じく誠心誠意謝罪をするのですが「松本さんはいるかい?」とお声をかけていただけるようになったんです。
最初はうまくいかず、失敗してしまっても心から謝罪し、誠心誠意対応することを忘れなければ、お客様に覚えていただくきっかけになります。
そしてルートインホテルズのファンになっていただけるんだと実感した経験でした。
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そうそう、二本松に勤務しているときに、バイキング朝食のご飯を炊いていなかったことでしょうか(汗)ご飯が無くなっているのに気が付かなかったために、お客様をお待たせするという事態になりました。炊き上がるまでお客様とお話をして場を繋いだということも忘れられないです。
――お客様からの叱責は身が引き締まり、妙薬になりますよね。そんな松本さんがホテルマンとして抱いているロマンや夢ってなんでしょうか?
松本 はい。私はまだホテルマンとして7年、経験としてはまだ浅いのですが、いつもお客様の笑顔や「ありがとう」という言葉をいただいた時に、やりがいを感じております。ご宿泊いただいたお客様が、満足そうにお帰りいただくことが私のホテルマンとしてのロマンであり、目標であります。
また、従業員が日々笑顔で精一杯働いていただける環境を作ることも、私の使命だと思っております。
そして、お客様からの感謝の言葉だけではなく、私のモチベーションになっていることがあるんです。お客様をお迎えする時に、お客様に喜んでいただけることは何か考えて実行することなんです。
その方法も色々あると思うのですが、実は私の趣味が園芸で、正月になると勤務するホテルの入り口に、私の手作りの門松を飾っているんですよ。私の家がかなりの山奥にあって、門松の材料は全て家の敷地から採取します。竹を切ってきて、その竹を削って、そして松を植えるっていう作業。12月は門松のために公休を取るんです。二本松や福島西インターのホテルでも手作り門松を飾りました。
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そのほか、七夕には笹を切り出してきて七夕飾りを作ったり、クリスマスにはイルミネーションを飾ったり・・・。私のひとつの生きがいでもあって、さあ、今年もその季節がやってくるぞ!と(笑)
――そんな気合の入った手作り門松のお客様からの反応はどうですか?
松本 福島はインバウンドのお客様が多いんですが、海外から日本に来られたお客様は、初めて門松を見る方もいらっしゃると思うんですね。日本人にとっては、ホテルに門松のあることってそんなに珍しいことではないと思うのですが、私がホテル運営を任されたからには、海外から来るお客様に日本らしさを味わっていただきたいと思っています。
「楽しいことやろう!」福島の魅力に負けないスタッフの遊び心
――さて、そんな福島で育ち、ホテルマンとして戻ってきた松本さんが感じる福島市の魅力や観光資源について教えてください。
松本 はい。福島にはですね、桃、りんご、そしてぶどうなど、多くのフルーツが楽しめるところです。桃は岡山か福島って言われています。サクランボはお隣の山形が有名ですが、桃だけではなくて、そこで栽培されるフルーツの種類も豊富で「フルーツ王国」と呼ばれているんですよ。
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お客様にもそんな福島を堪能していただきたいので、季節のフルーツは朝食のバイキングメニューでも提供していきます。また、今回はオープンから3日間、蛇口をひねると桃のジュースが出てくるっていうサービスも用意しました。当社の四国エリアのホテルでは、オレンジジュースで実施したことがありますが、福島版は桃です。
余談なのですが、開業前のカウントダウンイベントで、福島駅に面した客室の灯りで、開業日に向けてあと何日、という意味で数字を灯りで表示したのですが、桃を表現したりしました(笑)
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――遊び心もあって、スタッフの皆さんのキャラクターが伝わってきます。
松本 この地区のスタッフがそういうのが好きで、鳥飼地区支配人からも「せっかくの開業なので、楽しいこともやろうぜ」って。で、みんなも「やろうやろう」って言ってノリノリでやってます、はい。
そのほかにも、季節に合わせて色々なイベントは実施していきたいと思っています。例えば夏だったらかき氷をお客様に振舞ったり、あとはポップコーン。季節がいつかわからないですけど(笑)
あとは・・・そうそう、ヨーヨー釣りとか。お子様にも喜んでもらえるような取り組みも、どんどん仕掛けていきたいなって思っています。
これは、あの実は福島県内の全ホテルへの地区支配人からの命令(笑)ミッションなんです。昨年のお盆には全ホテルでかき氷を出すっていう。各ホテル毎に、おすすめのソースを考えてね、定番のいちごとかメロンではなくて、桃ジュレとか。また羊羹を使ったトッピングを考案しましたスタッフもいました。
――皆さん、相当楽しんでいますね(笑)
松本 そうなんです、そうなんです!フロントのミーティングの時にも、こういうトラブルがありましたっていう報告もももちろん大事なんですが「次は何をやろう」「ゴールデンウイークはどうする?」っていう感じにアイデアを出し合って、それに向かって全スタッフで盛り上げていくこと、またそれができることが、非常に今楽しくて仕方がないですね。
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ホテルが掲げるキャッチフレーズとは!?
――「ホテルルートインGrand 福島駅前東口」の特徴を紹介してください。
松本 当ホテルはJR福島駅東口より徒歩約2分、東北自動車道 福島西ICから車で約15分という好立地にオープンする、東北初の「Grand」になります。「Grand」の名を冠する以上は、設備面も充実させ上質な癒しを提供いたします。
おなじみの大浴場は、土湯温泉から運んだ天然温泉大浴場です。そして男女ともにサウナと水風呂もあります。充実した施設とサービスで、これまで以上にくつろいでいただけるホテルです。
レストラン『BiKuRa』では、地元の味が楽しめるバイキング朝食や、夕食では「スペアリブ」がイチオシのレストランです。
すべてのお部屋に42型以上AndroidTV(CAST機能)を備え付け、最新の設備もしっかりと導入。ビジネスにも観光にも対応できる理想的なホテルを目指しております。
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――福島駅前東口のホテルにキャッチフレーズを付けるとしたら?
松本 そうですね。まずは地域のNo.1になりたいなと思っています。地域のNo.1っていうのは、業績とかも含まれるんですが、私はお客様から愛されるホテルNo.1でありたいと。そしてもうひとつ、スタッフの笑顔がNo.1のホテルを目指しているので
「スタッフの笑顔No.1」
「地域に愛されるホテルNo.1」
ですね。
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今日の朝も、必ずスタッフで声出しとか挨拶練習などを実施するんですが、やっぱりみんな笑顔が素敵です。だから採用させてもらったんです。笑顔の練習とか言うと、みんな思いっきりノッてくれます。
よく言われるのが、お客様にはホテルのファンになってほしいっていうことですが、まず私はスタッフに当社のホテルのファンになってほしいなって思っているんです!
・・・このフレーズ、イケてるんじゃない(笑)
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「福島を満喫する旅の拠点」のホテルルートインGrand福島駅前東口はこちらをチェック!
note編集部